「コンサルタント1人の力を借りたい」。
かつて在籍していた戦略コンサルティングファームに、そう頼みたくなるほどリソースが足りていなかった。
UVインキで国内トップシェアを誇る株式会社T&K TOKA。同社は2023年8月ベインキャピタルによるTOB(株式公開買付け)を経て、社内には新体制への移行に伴う不安や戸惑いもあったといいます。しかし今、同社は代表取締役社長兼CEOである石合信正氏のもと、「質でのグローバルNo.1」を目指す熱気に包まれています。
その変革において、戦略部門のリーダーである西澤祐輔氏(Head of Strategy & Transformation)が直面したのは、現場の高い熱量を成果に変えるための戦略リソースの不足でした。
なぜ、大手コンサルティングファームではなく、「個人のプロフェッショナル」を選んだのか。マッキンゼー出身の化学領域エキスパートと共に挑んだ、プロジェクトの裏側についてお話を伺いました。
この事例の要点
| 企業 | UVインキで国内トップシェアの化学メーカー。2023年8月のTOBを経て経営改革の最中 |
| 課題 | 現場の高い熱量を成果に変えるための戦略リソースが不足していた |
| 活用方法 | 戦略部門にピンポイントで参画 |
| 成果 | 「前捌き」と業界知見によって、4つの戦略が動き出した |
HiTalentの支援テーマ例
経営層
経営課題整理/経営会議資料の構想・作成/経営に関する壁打ち
経営企画部門
中期経営計画策定/事業戦略策定/M&A戦略検討/海外進出支援
新規事業開発部門
事業機会探索/事業仮説検証・PoC支援/外部アライアンス検討
IT/DX・業務改革推進部門
IT/DX戦略策定/グランドデザイン策定/システム導入支援/BPR/コスト削減
研究開発(R&D)部門
R&D戦略策定/ロードマップ策定/技術テーマの事業化/オープンイノベーション
人事/組織開発部門
組織戦略策定/評価制度設計/採用戦略策定/研修コンテンツ作成
IR部門
IR戦略検討/統合報告書作成/財務情報開示/ESG・マテリアリティ分析
全部門に共通
AI・データ活用
担当するのは、戦略コンサル/IT・DXコンサル/ファイナンス人材/データ・AI人材のいずれかです。
この図は「HiTalent はどんなテーマで使えるのか」の見取り図として、全記事に同じものを掲載しています。ここに挙げたものがすべてではなく、ご相談内容に合わせて人材をアサインします。
創業80年企業が始めた、TOB後の経営改革
西澤氏:当社はUVインキ(紫外線硬化型インキ)で国内トップシェアを持つ化学メーカーです。2023年のTOBを経て、現在は社長の石合のリーダーシップのもと、「質でのグローバルNo.1」を合言葉に改革を進めています。
質というのは、単なる売上規模の拡大ではありません。製品品質、稼ぐ力、資産効率、顧客への価値提供などあらゆる面における質でのNo.1を指します。これからの時代、大量生産でコストダウンというモデルではもはや生き残れません。当社には80年近い歴史の中で培ってきた独創的なTechnology(技術力)と、お客様に寄り添うKindness(まごころ)という、社名である「T&K」にも込められた素晴らしい伝統があります。
この強みを武器に、より高い付加価値を提供できるグローバル企業へと生まれ変わろうとしています。
―西澤様が参画された際、組織にはどのようなポテンシャルと課題を感じていましたか?
西澤氏:入社してすぐに感じたのは、現場の推進力の高さです。いったん「やる」と決めた時の社員のパワーはすさまじいものがあります。また、ニッチトップを実現できる非常に高い技術力を備えながら、お客様に対してとてもきめ細やかな対応を徹底しており、非常に高いポテンシャルを秘めた組織であると直感しました。
一方で、目標と実行をつなぐ「戦略」の部分に曖昧さを感じました。また、優しく穏やかな社風ゆえに、責任の所在や仕事の期限が不明確になりやすく、リスクを理由に変化を躊躇う場面もあったため、そうした点には改善の余地を感じました。
今、社内では、チャレンジを推奨する風土が急速に醸成されています。このポテンシャルあふれる組織に、当たり前の規律と明確な戦略が加われば、もっと強くなれる。そう確信して改革を進めています。

ピンポイントで力を借りる-大手ファームではなく個人を選んだ理由
―その改革を進めていく中で、外部人材の活用を検討されたのですね。
西澤氏:はい。ただ、正直に言うと「私のリソースが足りない、助けてください」というのが本音でした(笑)。
現在社内では50近い改革プロジェクトが全社横断で立ち上がっており、現場からも前向きなエネルギーが生まれています。しかし、戦略を推進するリーダーである私のリソースは限られていました。私が全体の論点設計やストーリー作りといった上流工程はできても、そのためのリサーチや資料作成といった実務を担う右腕がいなかったのです。
―多くの場合、そういった場面ではコンサルティングファームへの依頼を検討すると思いますが、ファームへの発注は考えなかったのですか?
西澤氏:その選択肢は考えませんでした。今回のニーズには合わないと思ったためです。
大手ファームに依頼すると、論点整理から始まる「プロジェクト」としてパッケージ化されますが、その上流工程は私が自分で担っていたからです。また、パッケージで依頼をすると、コスト面でも高額になってしまいます。
求めていたのは、私が描いた設計図をもとに、調査や資料化を自走してくれる優秀なコンサルタントの存在でした。そんな時、ベインキャピタルの担当の方から紹介いただいたのが、フリーランスのプロフェッショナルを活用する「HiTalent」でした。これなら、私のニーズにピッタリとハマると感じました。
―多くの候補者がいる中で、HiTalent会員の冨田さんに依頼を決めた理由はなんでしたか?
西澤氏:コンサルタントとしての実務スキルに加えて、化学業界への深い造詣を併せ持っていたことが最大の決め手でした。
実務をお願いする以上、業界用語や基礎知識のキャッチアップに時間はかけられません。化学業界の経験があれば、その時間を大幅に短縮し、失敗するリスクを減らせると考えました。
正直、当初どんな方が来るのか情報はゼロでしたが、ご紹介いただいた冨田さんはマッキンゼー出身、かつ化学のバックグラウンドをお持ちの方でした。「化学×マッキンゼー」なら心強いと感じ、冨田さんにお願いすることにしました。
ご支援したハイタレント:冨田氏
プロフィール東北大学薬学部で博士号を取得後、武田薬品にて製剤技術研究に従事。マッキンゼーでは製薬、エネルギー業界などの戦略(DX戦略含む)、伴走支援を経験し、その後Exawizardsで主にヘルスケア業界やR&D業務向けのAIプロジェクト、データ分析プロジェクトをリード。現在は AI、ヘルスケア、化学、R&D領域を軸にフリーコンサルタントとして活動。
4つの戦略を推進させた「前捌き」と「業界知見」
―実際にプロジェクトはどのように進めましたか?
西澤氏:非常に密に連携しました。毎朝30分〜1時間の1on1ミーティングで私と方向性を固め、現場との会議には週2回ほど入ってもらい、議論を進めてもらいました。
彼には「機能性樹脂製品の拡販戦略」「UVインキ海外拡販戦略」「国内営業改革戦略」「競合調査」、4つものプロジェクトを担ってもらいました。私の役割は、全体像を先に作り、論点設計をすること。彼が迷わず作業に集中できる環境を整える前捌きに徹することでした。
―冨田さんの動きで、特に印象に残っている成果はありますか?
西澤氏:機能性樹脂製品の拡販戦略立案における冨田さんの動きは期待を大きく超えていました。
戦略立案の王道の一つに、グローバルのベストプラクティスを起点に自社とのギャップを特定し、打ち手へ落とし込むアプローチがあります。彼は前職での研究開発領域のベストプラクティスを既に体系的に理解しており、調査時間をショートカットして、「TOKAに何が足りないか」を即座に整理して提示してくれました。
本来なら複数回のエキスパートインタビューが必要なところを、彼の知見でスピーディーに進めてくれた、これは大きな時間短縮と質の向上に繋がりました。
また、あるニッチな領域での他社ベンチマークの調査では、私が舌を巻くほど深いインサイトを引き出してくれました。「1言えば10理解して進めてくれる」スムーズさは、まさにプロフェッショナルだと感じました。

第一線の声には、すでに戦略の“芽”が宿っている
―外部人材が入ると、現場との壁が生まれることも少なくありません。現場の反応はいかがでしたか?
西澤氏: それが全く逆で、彼は人気だったんです。
「冨田さん、次はいつ来るんですか?」「キャラ良かったですよね」と支援が終了して数か月経った今でも言われるほどです。彼はただ頭が良いだけでなく、コミュニケーション能力が非常に高く、当社メンバーの想いをうまく引き出してくれました。
戦略を描くほど、ついロジックを整えることに意識が向きやすいものです。一方で、ロジックを磨くほど、戦略を実行するメンバーとの温度感が置き去りになりかねません。だからこそ私は、戦略には「ロジカル」と「実行する想い」のバランスが何よりも重要だと考え、対話を非常に大切にしました。
―具体的にはどのように現場の納得感を作っていったのですか?
西澤氏: 私は製造や開発、営業など第一線のメンバーが、日々の現実に根差した「こうすべきだ」という感覚や仮説、やりたいことの芽をすでに持っていると思っています。冨田さんとそれを引き出して整理し、戦略ストーリーに落とし込む。論理的に弱い部分は補いながら、プロジェクトメンバーのアイデアを具体策へと磨き上げていきました。
このプロセスを経ることで、完成した戦略は「チームで作り上げたもの」としてまとまり、実行に向けた温度感も揃っていったと思います。
―プロジェクトを通じて、社内の雰囲気はどう変わりましたか?
西澤氏:TOB直後は、当時を知る社員から、新体制への移行に伴う戸惑いや不安感が社内にあったと聞いています。ですが、足元では空気が変わってきています。
石合のリーダーシップのもと、全社員の実行力により、多くの改革プロジェクトが成果を出し始めたことで、その不安は消え、さらに改革を推し進めるエネルギーへと変わってきています。そのパワーは本社だけでなく、海外拠点にも広がり始めています。
TOKAは今、当たり前のことを当たり前にやる改革フェーズから、更なる成長を実現するフェーズへ移行しようとしています。冨田さんとの協働は、その過程を前に進めるうえでの大きな推進力の一つになりました。
変革の最前線に立つ西澤氏が今伝えたい2つのこと
―最後に、変革に挑む企業の担当者へメッセージをお願いします。
西澤氏:伝えたいことは2つあります。
1つは、当社の社長・石合の著書『外資系スピード感を取り入れたら働きがいのある会社に生まれ変わった』を読んでほしいということです(笑)。当社で起きている変革のエッセンスが詰まっています。
私自身この本を読み、間近で組織が変革していくのを見られることを期待して入社しました。そして、まさしくその通り進んでいます。日本の製造業において重要な要素がいっぱい詰まっているこの本を読むのが、まずは重要だと思っています。

もう1つは、「外部の力を借りてでも、戦略を立てよう」ということです。
私は新卒でトヨタ自動車にいた頃、コンサルタントの活用には懐疑的だったんです。「自分たちで考え抜くのが仕事なのに、部外者が急に来て何ができるんだ」とさえ思っていました。 日本の老舗企業には、当時の私と同じように考える方も多いのではないでしょうか。
―そのような考えをお持ちだった西澤さんが、なぜ今は外部活用を推奨されるのですか?
西澤氏:プロフェッショナルが俯瞰した視点で戦略を立てることの重要性を、身をもって知ったからです。
日本には、素晴らしい技術や製品を持ちながら、戦略がないまま実行に走ってしまっている企業も少なくないかもしれません。その背景には、戦略立案が高度な専門スキルであるという事情があります。
自社にそのスキルが不足しているなら、外部のプロフェッショナルを活用して、一度しっかりとした戦略を立てるべきだと考えます。
また、そもそも「自分たちに何が足りないのか」にさえ気づけていないケースも多いのではないでしょうか。 だからこそ、何が足りないのかを知るという診断的な意味でも、まずは一度、外部の視点を入れてみる。そこで「自分たちだけでできるな」と思えばやめればいいですし、「これは効くな」と思えば続ければいいわけです。
伝統ある技術に外部の戦略スキルを掛け合わせる。それが日本企業の高い技術力をグローバルで勝てるビジネスへと昇華させる鍵になると信じています。
ーありがとうございました!

【関連トピックス】「TIME」誌(アジア版)に石合社長のインタビューが掲載株式会社T&K TOKAの変革をリードする代表取締役社長兼CEO・石合信正様のインタビュー記事が、2025年10月27日号の「TIME」誌(アジア版)に掲載されました。
「Inventions Built for a New Age(新時代を切り拓く発明)」という特集の中で、同社のグローバルNo.1に向けた取り組みが紹介されています。

Content by Global Kigyo Co., Ltd.
『HiTalent(ハイタレント)』は、戦略コンサルファーム出身者を中心とした審査済みのプロフェッショナル3,600名以上と、その活用を検討する企業をつなぐ案件マッチングプラットフォームです。これまでに300社以上をご支援してきました。戦略を描くだけでなく実行まで伴走できる人材を、必要な分だけ(お一人から、チームでも)ご活用いただけます。
HiTalentサービスサマリ
プロフェッショナル
(フリーランス)
- 戦略コンサル出身
- 外資系投資銀行出身
- 外資系IT・マーケ出身 ほか
個人 or チーム
HiTalent
- プロフェッショナルには、アサインから稼働終了までサポート
- 事業会社には、ニーズにマッチするタレントの稼働をマネジメント
審査済みの会員 3,600名〜
事業会社
- 上場企業
- 未上場・中小企業
- 未上場・スタートアップ
クライアント 300社〜
- ご要望を伺ってから、最短1週間でのアサインが可能です
- 期間は柔軟に対応でき、個人でもチームでも組めます
- 契約は「ハイタレント株式会社と企業様」「ハイタレント株式会社とコンサルタント」の2本を結びます

