こんにちは、ハイタレント広報です。
2026年7月29日(水)、虎ノ門のハイタレントオフィスにて、AI実践勉強会「AIに“作業を任せる”技術 ― ハイタレント流 AI実践 & 個別相談会」を開催し、タレントの皆さま15名にご参加いただきました。
少人数・オフラインの場で、前半は時津氏の実務でのAI活用デモ、後半は参加者からの質疑応答という構成でした。前半では参加者も手元でツールを動かしながら進み、終了後には個別に相談できる時間も設けました。
ご登壇いただいたのは、HiTalent会員でもある時津 遼資 氏です。

時津 遼資 氏(ときつ りょうすけ/株式会社illdefined 代表/HiTalent会員)
京都大学工学部卒。Mastercard(旧Applied Predictive Technologies)にてデータ分析/コンサルティングに従事した後、Palantir TechnologiesのDeployment Strategistとして、企業のデータ活用戦略の立案からパイプライン構築・アプリケーション開発までを一貫して担う。現在は株式会社illdefinedを創業し、データサイエンスとビジネスの両輪で企業の意思決定・業務改善を支援している。
テーマは「AIに作業を任せる技術」。ツールの使い方にとどまらず、どこまで任せ、どこから任せないかの線引きが話の中心でした。

AIを使うかどうかは、もう論点ではない
AIの進化は指数関数的で、業務で使うことはもう前提になっています。
時津氏は、そこを確認するところから話を始めました。重要なのはその先で、AIを前提にしたうえで人間が何を担うのかを明確にすることだといいます。
今回の勉強会で使われたのは、Claude Codeです。時津氏が業務のメインツールに据えている理由は2つ。定型業務をコマンド1つで動かせる「スキル(skill)」という機能が使えること。そして、Googleドライブ、Gmail、ローカルのファイルまで、コンテキスト(文脈)をすべてつなげられることです。
この2つを土台に、時津氏は営業先のリサーチ、データ分析、資料作成、経営管理、リーガルチェック、タスク管理まで、業務のほぼすべてをClaude Code経由で回しています。100ページある展示会マニュアルを読み込ませてFAQのように質問する、といった使い方も紹介されました。

自分がAIに何をどれだけ任せているかは、数字で見える
前半のデモは、参加者にも手を動かしてもらうところから始まりました。時津氏の会社のメンバーが開発した可視化ツール「Agent Walker」を、各自のターミナルから起動してもらいます。
スクリーンに映った時津氏の画面に並ぶのは、日ごとのトークン消費量、1タスクあたりの完了時間、使っているモデルの推移、よく使うスキル、時間帯別の利用状況、並行して動かしているエージェント(切り出した作業を任せるAIの単位)の数、そしてコストです。ここで時津氏は、1つの基準を示しました。
「10分から20分のタスクを投げられていれば、AIをフルに活用できていると言えます」
10分から20分というのは、AIが走り続けている時間のことです。その間ずっと人に質問が返ってきていない、つまり任せきれているという意味です。
自分が何にどれだけ使っているのかが見えること自体を、時津氏は革新的だと表現していました。

人は忘れる。スキルは忘れない
時津氏が定型業務をすべてスキル化している理由は2つあり、効率化はそのうちの1つでしかありません。
もう1つは、スキルそのものを磨き込めることです。
資料作成のようなアウトプットは、最初はどうしても微妙な仕上がりになります。図の並びが揃っていない、メッセージと中身が噛み合っていない、といったことが起こります。そこを1つずつフィードバックしていくと、質が上がっていきます。
ここで時津氏が対比として挙げたのは、人間へのフィードバックでした。自分自身に対しても、一緒に働く相手に対しても、フィードバックは翌日には忘れられてしまいます。
「スキルへのフィードバックは、絶対に忘れられません。だから一つひとつの業務でPDCAが回るようになる」
だから時津氏は、最初のうちは自分でやったほうが早いとわかっていても、投資と思って徹底的にフィードバックを回すといいます。
会議1本を起点に、業務がひと続きで動く
スキルは単体で終わりません。連動させると、業務のひと続きがまとめて動きます。
デモで示されたのは、商談を終えた直後の後処理でした。入力したのは「誰と何を相談し、現状はどうで、課題は何で、次はいつ会うか」という粒度のメモ1本だけです。そこから、議事録データベース(Notion)への構造化された登録、顧客データベース(CRM)の更新、フォローアップメールの下書き作成、次回予定のカレンダー登録までがひと続きで走りました。
「1〜2年前は全部手動でやっていました。お客さんが増えてくると、もう回しきれない。やりきれなかったことを、確実に、正確にやれるようになりました」
では、業務をどこまで分解してスキルにすればいいのか。時津氏の基準は、学生インターンに伝わるように指示を書く、という粒度です。
「こういうことをやりたいので資料を作っておいて」でもある程度は動きますが、狙ったものは出てきません。
資料作成であれば、①タイトルとリード文(コンサルティングでいうストーリーライン)を組み立てる、②作図の指示メモを書く、③実際に作図する、の3工程に分けます。工程ごとにフィードバックを回せるので、質が安定します。
文脈を保つ工夫も共有されました。
プロジェクトごとにディレクトリを分けてその中でセッションを立ち上げれば、案件をまたいで情報が混ざりません。蓄積の器としてはNotionを推していました。議事録・顧客・タスクをリレーションでつないでおけば、データの持ち方そのものに文脈が載り、連動した更新も一度でかけられるためです。



人に残るのは「課題の定義」と「実行」だけ
ここから話はマインドセットに移ります。これだけ任せられる中で、人は何をやるのか。
仕事は、課題を定義し、現状を把握し、問題を特定し、解決策を考え、実装し、実行する、という流れで進みます。時津氏の見立てでは、この真ん中の工程はすべてAIに任せられます。人に残るのは、流れの一番上にある「課題の定義」と、一番下にある「実行」だけです(下図参照)。
一番上は、何が良いことなのかを定義することです。クライアントにとって、あるいは自社にとって、何をするのが幸せなのか。
「良いというものを定義するのは、やはり人がやらないといけません」
一番下の「実行」は、2つに分かれます。人に伝えて人を動かすこと。そして、できたものに責任を取ることです。
人を動かすことについて、時津氏は、AI時代だからこそひたすら飲み会に行くという経営者の話に共感したと紹介しました。お酒である必要はないけれど、人と人として話すことは残ります。
「AIが言うのではなく、こいつが言うから動こうと思ってもらう。それが差別化になります」
そして責任です。アウトプットは出てきます。しかし、それを良いと判断すること、品質を担保すること、信じてくれたクライアントを幸せにするところまでやり切ること。ここに責任を取れるのは人間しかいません。
時津氏が意思決定という領域を事業として選んでいるのも、責任を取ることがAIにはどうしてもできないからだといいます。
この線引きは、戦略コンサルティングの仕事にもそのまま当てはまります。分析やリサーチ、資料作成は自動化できます。残るのは、誰にどういう情報を渡せば物事が動くのかという設計です。そこに頭を使い、そのための材料はAIに作らせる、という整理でした。

では、任せてはいけない線はどこに引くのか
後半のディスカッションで挙がったのは、AI活用がうまくいく話ではなく、うまくいかない話でした。すでにAIを業務へ組み込んでいる参加者からの質問に、時津氏が1つずつ答えていきます。
Q. 過去にうまくいったパターンをAIに渡すと、それが当てはまらないケースまで、同じやり方で処理してしまいます。渡した情報を疑わずに正しいものとして進めてしまうのです。これは人が見るしかないのでしょうか。
それはよくあることだと応じたうえで、時津氏が示した判断軸は、本当にその仕事が毎回同じことの繰り返しなのかどうかでした。
日程調整やお礼のメールのように、毎回だいたい同じ形で済む仕事は、自動化してしまえば良いといいます。過去のパターンをそのまま踏襲させても問題が起きないのは、この領域です。
一方で、毎回中身が変わる仕事は別です。
「経営層に宛てた大事なメールは、人が魂を込めて書かないといけない。しかもそれは固有性が高いので、毎回同じことをやるわけでもありません」
過去にうまくいったやり方が通用しないのは、まさにこちら側の仕事です。だから引き続き人がやるべきで、むしろやらないといけません。汎用か固有かの見極めこそが分かれ目だというのが、時津氏の答えでした。
Q. AIに任せても、最後の良し悪しの判断は必ずこちらに返ってきます。そこが手間なので、KPIだけ渡して、AI自身が良し悪しを判断しながら伸びていく形にはできないでしょうか。
それは難しい、というのが時津氏の答えでした。
理由は、AIが自分の出したものを自分で採点することになるからです。比べる相手が自分の過去のアウトプットしかないので、改善の方向は、いま出せているものの周辺にしか向きません。
出てくるものは少しずつ似通っていき、その枠の外は試されなくなります。短期的には最適に見えても、新しい切り口が出てこないので、成果は結局下がっていきます。時津氏はこれを「局所最適」と呼びました。
フィードバックを回すほど質が上がるのは、良し悪しを決めているのが人だからです。その役目までAIに渡してしまうと、仕組みそのものが止まります。
後半のやり取りは、任せられる範囲を広げる話でありながら、任せてはいけない線を確かめる時間にもなりました。
本編後の個別相談
本編終了後、会場は21時頃まで開放されました。そのまま残る方が多く、時津氏と1対1で話し込む方、参加者同士で情報交換をする方、それぞれ思い思いに過ごされました。
時津氏のまわりには、Palantirでの実務についての質問から、自分のサービスの紹介、データ分析の進め方の相談まで、話題が次々に持ち込まれます。「業務をすべてスキルにしたら、今度は都度こちらの判断を求めてくるようになって」という、本編の質疑と地続きの相談も出ていました。
ハイタレントのAX推進メンバーが、タレントの皆さまに操作のやり方をその場でお伝えする場面もありました。
アンケートでも、懇親の時間をもっと長く取ってほしいというご要望をいただきました。次回以降の設計に活かしてまいります。
参加者の声
事後アンケートに寄せられた声から、いくつかご紹介します。
- 「印象に残ったのは、活用レベルの高さです。もっと活用しないといけないという危機感を持ちました。」
- 「効率化のツールをAIに作ってもらっても、なぜかスキルという形にはならないケースが多かったのですが、今回スキルというものを知ることができました。他の方の状況が分かったのも良かったです。」
- 「初歩的な質問にも誠実に対応いただけた点がありがたく、ハイタレントスタッフのサポートにも感謝しています。とても勉強になり、非常に良い機会でした。」
- 「発言の機会もいただけてありがたい限りでした。また機会があれば参加したいです。」
他の参加者がどんな課題を持ち、どう取り組んでいるかを知ることができて良かった、という声も複数いただきました。AI活用の情報交換の場を定期的に開いてほしい、という要望もあわせて寄せられています。
おわりに
AIに作業を任せる技術は、ツールの習熟度の話に見えて、実際には自分の仕事をどこまで言語化できているかの話でした。学生インターンに説明できる粒度まで分解できているか。何が良いアウトプットなのかを自分の言葉で定義できているか。
そして、課題を定義することと、最後まで実行しきることは、人の側に残ります。
ハイタレントでは、案件のご紹介にとどまらず、会員同士が学び合える「HiTalentコミュニティ」の運営を続けていきます。
ご参加いただいた皆さま、そしてご登壇いただいた時津氏に、あらためて御礼申し上げます。
『HiTalent(ハイタレント)』は、戦略コンサルティングファームや投資銀行の出身者を中心に、審査を通過したプロフェッショナルが登録するハイクラスフリーランスのコミュニティです。「優秀な個の選択肢と可能性を広げ、人類の進化に貢献する」をMissionに掲げ、上流の案件をご紹介するだけでなく、今回のような勉強会を通じて、プロフェッショナル同士が学び合える場づくりにも取り組んでいます。

