AIは関数近似にすぎない ── 戦略・経営・実装の3人が語った、任せる線と残る線

こんにちは、ハイタレント広報です!

12月16日(火)、ハイタレントオフィス(虎ノ門)にてHiTalent会員の方限定の「データ・AI勉強会」を開催しました。

ハイタレントでは、会員であるフリーランスの皆様が直面する「新しい知識・トレンドに触れる機会が少ない」や「プロジェクト外で学べる“成長の場”がほしい」といったお声に応えるため、プロフェッショナルをお招きした講演会・勉強会を定期的に企画・開催しています。

今回は、多くのプロフェッショナルが関心を持つ「データ・AI」のテーマに焦点を当て、戦略立案から現場実装までを網羅する豪華な登壇者をお招きしました。

少人数制の会には、データ・AI領域を武器にしたい方や、各業界の最新動向を知りたいという熱量の高い会員さまにご参加いただき、最新のAIツール活用術から、将来のコンサルタントの在り方まで、非常に解像度の高い議論が展開されました。

目次

登壇者について

今回は、AI・データ活用における「戦略」「経営」「実装」の各領域の最前線で活躍されている3名のハイタレント会員をお招きしました。

登壇者の冨田氏。戦略コンサルティングファーム出身で、製薬業界のDX・AI推進を専門とする

1. 冨田氏(戦略コンサル出身 × 製薬業界DX/AI推進)東北大学薬学部で博士号を取得後、武田薬品にて製剤技術研究に従事。マッキンゼーでは製薬、エネルギー業界などの戦略(DX戦略含む)、伴走支援を経験し、その後Exawizardsで主にヘルスケア業界やR&D業務向けのAIプロジェクト、データ分析プロジェクトをリード。現在は AI、ヘルスケア、化学、R&D領域を軸にフリーコンサルタントとして活動。

登壇者の三方氏。BCGを経てAIコンサルティング企業を創業し、AIファースト経営を推進している

2. 三方氏(戦略コンサル出身 × AIファースト経営)京都大学大学院で災害ビッグデータ分析に従事後、BCGで多業界の戦略立案に携わる。スタートアップRenoSysでDX支援を経て、2021年にAIコンサルティング企業を創業。AI導入から利益創出までのFDE型再設計アプローチを推進し、複数企業でEBIT改善に貢献。

登壇者の中氏。エンジニア出身で、要件整理からPoC・実装・内製化支援までを一気通貫で手がける

3. 中氏(エンジニア出身 × 現場実装のプロフェッショナル)

10年以上にわたり、官公庁・製造・IT・エンタメなど多様な業界で開発・PM・講師を経験。要件整理からPoC・実装・内製化支援まで一気通貫で手がける。近年は新人エンジニア研修講師として、ユーザー視点のシステム設計を指導している。

勉強会トピック

勉強会は、登壇者によるライトニングトーク(LT)に続き、参加型のパネルディスカッションという構成で進行しました。

ライトニングトーク(LT)

1. 「AIは関数近似にすぎない。コンサルタントに求められる『使わない』判断」

トップバッターの冨田氏は、AIの仕組みや歴史、そしてコンサルタントがAIプロジェクトにどう介在すべきかについて、実例を交えて共有しました。

冨田氏は、AIの本質を「関数近似」であると説明します。身長から体重を予測する単純なモデルも最新のAIも、人間が選んだモデルに対して最適なパラメーターを決定する「学習」という仕組みは共通しています。昨今、自然言語を扱える生成モデルが登場し、答えが一つに決まらないタスクも可能になりましたが、冨田氏は「ルールベースで対応可能な業務は、ルールベースで実施した方がよいケースが多い」と強調。計算負荷や動作の安定性の面で優位な、AIの要否から検討することもコンサルタントの重要な役割であると述べました。

また、生成AI導入でのプロセス設計において、ヒトとAIの役割分担に変化が起きている点も紹介し、作業をAIに任せ人間がチェックに回るというプロセス設計を行うことが、ビジネスにおけるAI導入の妥当性を左右すると語りました。

※ルールベース:「もしこうなったら、こうする(If-Then)」のように、人間があらかじめ明確な条件を設定し、それに基づいて処理を行う仕組みのシステムを指す。従来のプログラミングやExcelの数式などがこれにあたる。

冨田氏がライトニングトークを行っている様子。背景のスクリーンには「そもそもAIってなに?」「現在までのAIの流れ」が並ぶ目次スライドが映っている

2. 「自分の脳をAIに移植し、1人ユニコーンも実現可能」

続いて登壇した三方氏は、参加者から共有された「AIによって生産性が5割増しになった」「リサーチ業務が1/4の時間で済むようになった」といった実例を踏まえ、生産性を10倍以上に劇的に向上させるための具体的なアプローチを共有しました。

三方氏は、生産性向上の鍵はAIにコンテキスト(文脈)を持続的に保持させつつ、AIと人間が協業することにあると言います。すなわち、自身の考え方やスキル、プロジェクトのコンテキストを記録するプロジェクトごとの「箱」を作り、自分の脳を移植するようなイメージで活用する例を提示しました。具体的なツールとしてコードエディターの「Cursor」を挙げ、チャット形式よりも、エディターという箱の中でファイルを更新しながら相互的なやり取りを続けることで、柔軟なアウトプットが可能になると説明しました。

また、人間とAIの役割分担については、人間は「本質的な課題の見立て」や「問いを立てる」といった意思決定側に注力すべきだと述べました。AIの推論能力やマルチモーダルな実行能力、メモリ(短期、長期どちらも)が向上した現在だからこそ、リサーチ業務などの実働をAIに任せ、人間が意思決定を行うレベルを目指すことで、将来的には「一人ユニコーン」も可能になると語りました。

三方氏が手振りを交えて話している様子。生産性を10倍以上に高めるためのアプローチを共有した

3. 「AIに自分の仕事を再現させ、自律的なエージェントとして運用する」

最後に登壇した中氏は、エンジニアの視点から、ハルシネーション*を克服し、業務を安定して自動化するための具体的な手法を共有しました。

中氏は、AI活用の肝は「AIに何ができるか」ではなく、「自分がやっている仕事をAIにさせるにはどうすべきか」という観点で評価することだと言います。一定の品質でルーティンを回すため、ルールエンジンとプロンプトによる制御を行い、同時に批判的に評価するプロンプトを立ててレビューを行うといった品質管理を紹介。昨今のAIは内部的に自己批判を行う仕組みはあるが人間が期待する精度を実現するのは難しいため、ユーザーによるガードレール設計により期待する出力に寄せやすい事に言及しました。エンジニア以外でも出来る業務自動化例として請求書作成や文書作成などを一定の品質を維持して自動化できると語りました。

また、組織推進例の一つとして、「グループリーダー等が業務の棚卸しを行い、現場または外部のAI推進役がプロンプトを作成して渡すこと」が手っ取り早く効果を実感できる方法の一つであると話しました。ツール選びにおいては、まずは一つのAI(例:Claude)を深く使いこなし、モデルの弱点を補うように異なるAIを使うことが、精度の高い意思決定と自動化を実現する鍵であると締めくくりました。

※ハルシネーション:AIが事実に基づかない情報を生成すること。

中氏がスクリーンを手で示しながら話している様子。エンジニアの視点から業務自動化の手法を共有した

パネルディスカッション

イベント後半では、AI活用の実態から組織浸透の壁、そしてコンサルタントの価値の変遷まで、多岐にわたる議論が交わされました。

組織浸透の制約と「現場のモチベーション」

組織へのAI浸透には依然として高い壁が存在します。大企業ではデータの外部流出への制約が厳しく、特定のベンダーに依存せざるを得ない「ベンダーロックイン」の課題が共有されました。また、DX推進において外部の専門家が介入する際、現場への配慮を欠くとモチベーションの低下を招きやすいという失敗事例も挙げられました。

戦略コンサルティングの変容と「人間力」の回帰

戦略コンサルティングの実務において、AIはリサーチや仮説構築、論点設定の段階で大きな威力を発揮しています。特にB2C領域では、SNSの情報を活用した消費者インサイトの抽出と相性が良く、論点の分解や検証方法の提案に活用している具体例が紹介されました。

こうしたAIの進化によりアウトプットが高速化する中で、コンサルタントの価値はどこに宿るのでしょうか。三方氏は、「本質的な価値は、文章に残っていない『経験したこと』に基づいた知見にあり、AIの前後で変わらない」と言います。 むしろ、AIによる代替が進むほど、クライアントとのコミュニケーション能力や人間力が案件獲得において重要になると強調しました。新人教育においても、「問いを立てること」に集中させ、クライアントと深く議論するための土台を築くべきだと助言しました。

AIが溶け込む未来の展望

最後に、AIの未来について「直近の2、3年先の変化を当てるよりも、むしろ10年先のような長期的なトレンドの方が予測しやすい側面もある」との見解が共有されました。現在はロボティクス、バイオ、宇宙などの分野に資金が集中しており、これらがAIと融合していく流れは確実なものとして捉えられます。加えて、中国の台頭やアメリカのインフラの強さといったマクロな要因が、今後の競争環境を決定づけていくと指摘しました。

将来的には、AIはスマホなどのデバイスに組み込まれ、人々が意識しない形で日常生活に浸透していく。その過程で、ホワイトカラーの仕事が削減される可能性に触れつつ、一方でコンテンツ産業のように「人間が作ったもの」としての価値が再評価される可能性についても言及し、セッションを締めくくりました。

後半のパネルディスカッションの様子。登壇者3名とモデレーターが並び、スクリーンには「【AIによる業務効率化ユースケース】― 大企業での現在地を踏まえて ―」というテーマが映っている

おわりに

「戦略から現場実装、新人への教育や期待値まで、点と点が線で繋がるような有意義な時間だった」、「今までなんとなくAIを使っている気になっていたが、AIを活用し切れていない焦りを感じた」、「人間にしか出せない価値を考えるいいきっかけになった」といった感想が寄せられました。

ハイタレントではこうした勉強会を今後も定期的に開催していきます。ご興味のある方はぜひ<こちら>よりご登録ください!

登壇者の皆様、そしてご参加いただいた会員のみなさま、ありがとうございました!

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『HiTalent(ハイタレント)』は、戦略コンサルティングファームや投資銀行の出身者を中心に、審査を通過したプロフェッショナルが登録するハイクラスフリーランスのコミュニティです。「優秀な個の選択肢と可能性を広げ、人類の進化に貢献する」をMissionに掲げ、上流の案件をご紹介するだけでなく、今回のような勉強会を通じて、プロフェッショナル同士が学び合える場づくりにも取り組んでいます。

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