飽きる前に、託す ー Prism創業者2人が語る「売却という選択」とハイタレントを選んだ理由

こんにちは!ハイタレント広報です!

事業を立ち上げ、軌道に乗ってきたとき、あなたはその先をどう考えますか。

「もっと大きくしたい」「自分がやり続けたい」——そう思う一方で、「次のフェーズは別の誰かに任せた方が伸びるかもしれない」「自分自身は全く別のことに向かいたい」という思いが浮かぶこともあるはずです。

HiTalent会員でもある郷中さんと野条さんは、2023年に戦略コンサル志望者向けのケース面接対策サービス「Prism」を共同創業し、2025年にその運営会社(株式会社Think For Yourself)をハイタレントに株式譲渡しました。

売却と聞くと「葛藤がある」「何かの終わり」と感じる方も多いかもしれません。でも、今回のインタビューに詰まっていたのは、それとは違う第三の捉え方でした。事業の出口や次のステップを模索している方にとって、解像度を上げるヒントになれば幸いです。

郷中 健太郎(ごうなか けんたろう)

Prism共同創設者・元代表。慶應義塾大学経済学部卒業。新卒で戦略コンサルティングファームのA.T.カーニーに入社し、様々なプロジェクトに参画。その後スタートアップを経て、独立。英語及び日本語即興ディベート全国大会優勝。コンサルティングファームへの入社対策が内定者やOB・OGによる自己の成功体験に基づく場当たり的なFBのみに終始しており、再現性の高い考え方を教えられていないことを感じ、根本的な思考力から身につけることが重要だと考え、思考力から身に着けるケース面接対策プログラムとして、2023年にPrism、並びにその運営会社(株)Think For Yourselfを設立、2025年ハイタレント(株)に株式譲渡。

野条 大樹(のじょう だいき)

Prism共同創設者・元副代表。京都大学工学部地球工学科卒業。郷中よりケース面接指導を学生時代に受け、新卒で戦略コンサルティングファームのBain & Companyに入社。金融、電子機器、ヘルスケア領域の企業への、収益性改善、組織改革、買収提案などのプロジェクトを経験。(株)Think For Yourself再参画後は、人材紹介事業の立ち上げを推進。

Prismについて

2023年設立。戦略コンサル領域に特化したケース面接対策および転職エージェント事業を展開。マッキンゼー、BCG、ベイン等の難関ファームに対し、一般的な対策とは一線を画する高い内定率を誇る。「新卒MARCHからの外資戦略入社」や「MBBK全内定」、さらには某外資系戦略ファームの内定者の半数を占めるなど、多くの実績を輩出している。

運営会社:株式会社Think For Yourself(2025年ハイタレント(株)子会社化)

目次

Prism誕生の経緯——思考力から鍛えるケース面接対策

─郷中さんがケース面接対策の領域で事業を始めようと思った理由を教えてください。

郷中:フリーコンサルをやっていると、「このままでは自分が働き続けないと収入が入らない」という感覚を抱くようになります。そんな中、何かしら自分が手を止めても回る仕組みを作りたいと思っていました。

スタートアップにいた経験から、VCから調達してホームランを狙うスタイルは確率が低いと肌で感じていたので、それよりもスモールビジネスの方がいいと考えていました。「起業自体がリスクの高い行為であるため、事業内容はリスクの低いものの方が望ましい」という発想です。

資本がなくてもできる領域として教育や人材なども思い浮かぶ中で、「ケース面接対策」に目が止まりました。

当時の他社のサービスは、うまくいった人の体験談や成功体験に基づいた場当たり的なフィードバックがほとんどで、再現性のある思考力を身につけるものがありませんでした。それを体系化できれば面白いし、ニーズもあると思ったんです。

─そこから野条さんと一緒にやることになった経緯を教えてください。

郷中:ビジネスは「何かを作ること」と「それを売ること」の両方が大事です。

作ることに関してはイメージできていましたが、「売る」、つまり認知を広げて営業するところは、野条がインフルエンサーとして就活生のフォロワーを多く持っていたので、一緒にやれるなら大きな強みになると思いました。

野条:誘われた側の率直な気持ちとしては、まあまあの確率で儲かる、かつ借金などが必要なものではなかったので、とりあえずやってみよう!と思いました。

また、私は学生時代に郷中からケース面接指導を受け、それがBain内定につながった経験があったので、そのサービスを一緒に作れるなら、と思いましたね。

2022年10月14日、郷中さんが野条さんに「スモールビジネス企業のアイデアあるんだけど、近いうちに話せないかな?」と声をかけたLINEのやり取り

─Prismが特にこだわってきたポイントは何ですか?

郷中:「あらゆる対策の中で最も内定率の高いサービスにする」という一点に尽きます。

野条:同感です。より具体的に説明すると、ケース面接とジョブ選考はセンター試験と2次試験の関係と同じで、見ているポイントが違います。私の周りでも、ケースはたくさん通過するけどジョブで評価されない、という人は多かったです。

従来の対策は1on1で模擬ケース+FBを元社員や内定者にやってもらうのが主流で、ジョブ対策は就活生同士で集まってやるものの体系化されておらず、効果が限定的でした。そこで、そもそもの土台の思考力を鍛えればケースでもジョブでも戦えるのではないか、というのが発想の起点です。

郷中:その点、私自身はディベートサークルで鍛えた思考力がベースにあったので、面接直前の対策はそこまでしていませんでした。周りにいたディベート出身の仲間たちも同様でした。

であれば、その「思考力を鍛えるプロセス」を言語化し、再現性を高めたカリキュラムを作れば確実に内定率が上がると確信していました。

地頭力を細分化して言語化する。それをトレーニングできる演習を作る。微小な筋道を作って、受かるための評価を具体化する——この構成で作り続けました。

売却を決断するまで——2人が「次」に進もうと思った理由

─事業を立ち上げた時点で、出口はどう考えていましたか?

郷中:最初は「不労所得で月50万×2人分あればいいね」という話をしていました。本当にそれくらいの感覚で、出口は考えていませんでした。

野条:そうですね。ただ、そこから少し経った頃に、人材紹介や法人研修に横展開すれば事業として大きくなれるかもという話にもなりました。

当時、ロジカルシンキングの法人研修で売上の多くを立てている上場企業があり、時価総額20億円程度になっているのを見つけたので、そこを4〜5年で目指せばいいのではないかと話していました。

─その後、売却を本格的に考え始めたのはいつ頃ですか?

郷中:本格的に売却を考え始めたのは2025年に入ってからです。

事業拡大のため、人材紹介や法人研修にも手を伸ばしてみたのですが、思っていたより難しかったのもあり、隣接領域で頑張り続けるより、全く新しいことへの興味が強くなっていきました。

野条:カリキュラムの0→1は作り上げたという実感がありましたが、そこから拡大していくフェーズへの熱量はお互いにそれほど高くありませんでした。とはいえ、明確に強みがあり将来性がある事業であると思っていたので、そこをより伸ばせる会社に引き継いだ方が、事業にとっても自分たちにとっても良いと考えるようになりました。

郷中:実は、2024年の時点で売上が大きく伸びてPMF(プロダクトマーケットフィット)を感じられるようになり、DMで買い手候補様から声をかけていただくことも増えていて、「売れるかもしれない」という意識自体はありました。ただ、まだ自分たちで頑張ろうという気持ちが強くて、具体的には進めていませんでした。

なぜハイタレントだったのか——DDの質とシナジー

─数ある選択肢の中でハイタレントを選んだ決め手を教えてください。

郷中:まず大きかったのは、DDのやり取りです。ハイタレントから来る質問がどれも「確かにここが重要なポイントだな」と思えるものばかりで、やり取りを重ねる中でサービスへの理解が深まっていくのを感じました。

他の候補先では質問の角度が異なると感じることもあった中で、ハイタレントの方々の理解度の高さを強く実感しました。

もう1つは、自分自身が次のことに早く動きたいという気持ちです。

他の候補先だと「サービスをしっかり理解してもらうために1年がっちりロックアップして」という話になりがちでしたが、ハイタレントであればコンサル領域に精通した方々が既にいるので、引き継ぎに時間がかからない点も大きかったです。

野条:あとは単純に、垂直統合的な側面が大きいと思います。コンサル志望者の選考対策と、コンサル出身者が集まるプラットフォームが一緒になることで、学生から現役コンサルタントまでをつなぐ価値が生まれます。

それらすべてにマッチしていたのがハイタレントでした。

─実際にやり取りをする中で、印象に残ったことはありますか?

野条:コミュニケーションの誠実さです。「買ってやるぞ」という態度の買い手候補もあった中で、ハイタレントのチームは終始誠実に対応してくれました。

日程調整の返信速度もそうですし、全体的なコミュニケーションのトーンが違いましたね。直感的に信頼できる方々だな、という印象が残っています。

郷中:子会社化した後の話ですが、全社定例でPrismの事業の様子—今の戦コン新卒市場がどんな状況か、どんな課題があるか、どの部分が刺さっているか—が共有されていて、社内の皆さまもそれに興味を持って聞いていると知りました。

私たちが作り上げたものをリスペクトしながら、さらに進化させるべく動いておられることを聞いたときは嬉しかったですね。

やっておけばよかった準備——税務・数値管理の盲点

─今振り返って、「もっとこうしておけばよかった」と思うことはありますか?

郷中:2つあります。

1つ目はタイミングです。PMFして売上が伸びていた段階で、もう1年早く売却を進めていても良かったかもしれないと思っています。そのタイミングの方が交渉力は強かったし、今思うともう少し良い条件を引き出せた可能性があります。

2つ目は税務と数値管理の部分です。そもそも立ち上げ当初は選択肢にもなかったのもあり、売却を前提とした財務管理ができていませんでした。

売却を考えないなら節税に動くのが合理的ですが、売却を考えるなら利益を大きくした方が評価額が上がります。PL・BSの作り方が変わってきます。

税理士についても、売却を見据えた財務設計ができる方に早い段階から相談しておくべきだったと思います。

野条:数値管理の点は本当にそうで、月次の売上管理やダッシュボードを最初から整えておけばよかったと思います。

私たちの場合、業務のガイドライン化やマニュアル化は完璧にできていて、自分たちの手を動かさなくても回る状態は作れていました。ただ、外部の方に収益力を透明性高く説明するための数値管理は別の話で、そこが足りていませんでした。

売却を考えているなら、あるいは将来的な可能性があるなら、数値管理と税務の設計は最初から意識しておくべきだと強く思います。

「飽きる前に託す」——売却の判断軸とアドバイス

─売却を検討されている方へのアドバイスがあれば教えてください。

郷中:売却すべきかどうかの判断は、突き詰めると「意欲・能力・事業の伸びしろ」の3つで決まると思っています。

意欲がある、かつ自分で伸ばせる自信があるなら続けた方がいい。

ただ「飽きつつある」という感覚が出てきたら、売却を考え始めるタイミングです。完全に飽きてしまうと事業の数字が落ちてきますし、条件交渉力も弱くなります。飽きる前に動き始めることが大事です。

能力の面で言えば、PMFさせることと組織を拡大してオペレーションを回すことは別の能力です。スケールさせるフェーズが苦手だと感じたなら、それも売却の判断軸になります。

最後に事業の伸びしろという点では、スモールビジネスは参入障壁を作りにくく、模倣サービスが出てきて利益が削られるリスクがあります。競争環境を冷静に見ることも重要です。

野条:「どこに売りたいか」から逆算して事業を作れると、評価額も上げやすいですよね。その際に重要なのはシナジーです。

シナジーって見出そうと思えばいろいろ言えてしまいますが、本質的には、買い手のKPIに合致するかだと思っています。売却する事業単体のキャッシュ創出力が最も重要なのはもちろんですが、プレミアムや複雑性コスト、不確実性を踏まえると、買い手の本業PLへのヒットの定性要因も重要です。

他に大事だと思うことは、自分たちがいなくても回るように仕組み化することです。私たちも「いかに自分たちが手を動かさなくても回るか」を考えてどんどん仕組み化していたのですが、それが結果として売却の準備につながっていました。

売却後のキャリアと新刊——研究者の道、そして投資と教育

─お二人がこれからどんな動きをしていくか教えてください。

郷中:今は世界一周の旅の途中で、4月末か5月頭に帰国する予定です。帰国後はフリーコンサルを再開しながら、いくつかのスモールビジネスを試していくつもりです。

世界を周りながらビジネスアイデアが次々と湧いてきているので、良さそうなものを1〜2ヶ月単位で試しながら育てていくスタイルでやっていきたいと思っています。

もう1つ、経済学のメカニズムデザインという分野への興味が強くて、大学院の修士・博士課程に入り直して大学教授を目指すことも真剣に考えています。5年間、研究に集中する選択肢です。

野条:今は旅行などもしつつフリーコンサルをしており、ありがたいことに転職や事業立ち上げの引き合いもいくつかいただいているので、次の道も定まりつつあります。近いうちに決断するつもりです。

長期的には、昔から幼児教育や非認知能力への関心があるので、そこに携わりたいと思っています。

ただ、受験や資格と違って非認知能力ってふわっとしていますし、幼児教育って自由にのびのびとさせるものですよね。要は、マネタイズが非常にしにくい領域で、過去の失敗事例もたくさんあるんです。

なので、投資で膨らませたお金をNPO的に使う方が結局やりたいことができるのではないか、というのが今の考えです。ICUの学費を基金の運用によって無償化した新井さんのようなイメージです。

また、まだ26歳で未熟者ということもあり、次は起業よりも投資の経験が積める場に身を置きたいと考えています。

─お二人は最近、共著で本を出されましたね。

郷中:競合サービスが多い中で、候補者から見て差別化が難しいという課題がありました。本という形でサービスの内容をしっかり詰め込めば、質を直接伝えられると考えたのが出発点です。

3年間カリキュラムを磨き続けてきた手応えもあり、コンサルタントに限らず、事業を動かすすべての人に必要な力を言語化した一冊になっていると思います。

─HiTalentの会員の方にはどんな読み方をしてほしいですか?

郷中:HiTalent会員の方がクライアント先でチームメンバーや若手を育てる場面も増えていると聞きます。「コンサル的な思考力をどう教えるか」の言語化ツールとして使っていただけると、活躍の幅が広がると思います。

野条:私の母が読んで「面白かった」と言っていたのは、「少子化問題の解決策」という身近なテーマを使って問題解決のフレームを解説している章でした。コンサルとは無縁の人にも伝わる構成になっているので、コンサルに携わる方はもちろんですが、それ以外の方にも幅広く読んでいただける内容だと思います。

『ケース面接攻略法で学ぶ コンサル頭のつくり方』(郷中健太郎・野条大樹 著)|Amazon

─最後に、事業の立ち上げ、または次のステップを考えているHiTalent会員の方へ一言お願いします。

野条:コンサルのジュニアがフリーランスに転じると時給は5倍以上になるケースが多いです。

これは個人的な考えですが、戦略コンサルティングの経験は長くなるほどに「コンサルがうまくなる」だけで、起業に直結するスキルが身につくわけではないと思っています。であれば、フリーコンサルの時給で資金を作り、生活防衛や事業投資に充てるのは非常に合理的な選択です。

私自身、HiTalentに登録していること自体が挑戦のセーフティネットになっている実感があり、恵まれた環境だと感じています。

郷中:フリーコンサルの収入をベースにすれば、稼働を50〜80%にして残りで事業を立ち上げることもできますし、一定期間集中して稼いでから立ち上げるという選択肢もあります。期待値で言えばアップサイドしかないと言っていいくらいなので、ぜひ活用してほしいですね。

ハイタレントでは、今後も積極的にM&Aを推進していきます。

事業売却をご検討中の方はもちろん、100%の売却に限らず、資本業務提携などの形も含めてご相談が可能です。

「まだ具体的ではないけれど、一度話を聞いてみたい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。

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