こんにちは、ハイタレント広報です!
11月25日(火)に、HiTalent会員さま限定のイベントとして『日本アニメ3.5兆円 ― 急成長する世界戦略に潜む落とし穴』の講演会をオンラインにて開催しました!
ハイタレントには、日々第一線で活躍する多くのフリーランスの皆さまにご登録いただいています。
そんなハイタレントの皆様からは、次のようなお声をよくいただきます。
- 新しい知識・トレンドに触れる機会が少ない
- プロジェクト外で学べる“成長の場”をもっとほしい
- 他のプロフェッショナルの視点に触れたい
フリーランスという働き方は自分の専門性を活かしやすい一方で、どうしても日々のプロジェクトに意識が向きやすく、新しいテーマに触れたり、視座をアップデートしたりする機会が限られてしまいます。
こうした背景から、ハイタレントでは案件紹介だけではなく、コミュニティ運営の一環としてタレントの皆さまの「成長機会」をつくることにも力を入れており、プロフェッショナルをお招きした講演会・勉強会を定期的に企画しています。
今回はその取り組みの一環として、世界的に注目が高まる「日本アニメ・コンテンツ産業」の最前線をテーマに講演会を実施しました。
アニメ業界やコンテンツビジネスに関わる多くの会員さまにご参加いただき、非常に熱量の高い時間となりました。
※本レポートでは、講演内容の一部のみを抜粋してご紹介しています。当日の講演では、ここでは触れられない具体例や議論も展開されました。
登壇者について

尾形 拓海 氏(株式会社Haru 代表/HiTalent会員)
東京大学経済学部を卒業後、アクセンチュアに新卒で入社。マスメディア業界を中心にビジネスコンサルティングに従事。その後、シンガポールに移住しWeb3 x アニメスタートアップでビジネス全般を統括。世界初のアニメ動画NFTをリリース。帰国後、Netflix Japanでコンテンツライセンス担当として、Netflix Originalを含む200以上の作品を調達。現在は株式会社Haruの代表として、上場企業から地方中小企業まで、幅広く事業戦略の策定と、AI・DXによる実行推進をプロジェクトの一員としてご支援。
尾形氏 運営note:https://note.com/haru_consulting

深田 航志 氏(NEC インフラDX事業部門 メディア統括部 シニアプロフェッショナル)
1998年4月~ビデオリサーチに新卒入社。調査部隊、テレビ・ラジオ局の営業を経て、デジタルメディアのメディアデータ事業企画・開発・営業を担当。その後はテレビ視聴ログで外部企業とのマネタイズ事業を担当。2018年2月~インテージ入社。新規事業部門から、テレビ動画事業の責任者となり、メディアデータ事業および新規事業・プロモーション総括を担当。2024年4月~NEC入社メディア関連の新規事業領域を担当。2月にParrotAnalytics社との営業連携を指揮し、現在コンテンツ(IP)領域での事業を担当。
講演内容トピック
1. アニメ人気の“実像”と、隠れた偏り
講演の冒頭では、まず「日本アニメは世界で強い」という一般的なイメージが取り上げられました。
しかし、データを丁寧に紐解いてみると、世界で視聴されている作品の多くは ナルトや進撃の巨人など、ごく一部のレジェンダリー作品に偏っている という事実が明らかになります。最新作がSNSで話題になる一方、“継続して見られているアニメ”という観点では、長年愛される大型IPが圧倒的です。
ここで尾形さんは、「市場そのものは伸びているが、その成長が広く作品に行き渡っているわけではない」という視点を提示し、講演全体の問題提起が始まります。
2. ヒットを“育てる”難しさ
ではなぜ、新作アニメは世界で長期的な存在感を維持しづらいのか。その答えが、次の「ヒットを育てる難しさ」というテーマにつながります。
アニメIPのビジネスは、「ヒット → ファン育成 → 収益化」のプロセスが前提です。しかし、育成フェーズに相応の投資ができなければ、一度盛り上がった作品でも、放送終了と同時に勢いを失っていきます。
加えて、制作委員会方式では長期的な意思決定や“攻めの投資”がしにくく、“覇権を取ったのに、レジェンダリーになれない”、つまり “伸びるべき作品が伸びきれない” という現象が起きます。
ここで、最初の「偏り」の背景がつながっていきます。
3. 新しいヒットが生まれにくくなっている背景
さらに尾形さんは、より上流の問題として原作不足を指摘します。
強い原作はそもそも数が限られており、新規の大ヒットを狙える作品が生まれにくくなっているという事実があります。この“原作の供給不足”が、結果として新作が伸びにくく、続編が増えやすい現在のアニメ市場構造につながっており、結果的にトップクラスのアニメが“続編もの”に偏る傾向が強まっています。
つまりアニメ産業は今、「ヒットが偏っている」、「育てきれない」、「新しい種が足りない」という三重の課題を抱えている、という構造が見えてきます。
4. アニメは“本編ではなく権利で稼ぐ”ビジネス
続いて議論は「では、アニメ産業はどこで稼ぐのか?」という本質的なテーマに移ります。
アニメは本編だけで黒字化することが難しく、収益の中心は 配信・グッズ・ゲーム・音楽・イベント などの二次展開です。
その中でも、特にグッズは
- ファンの愛着を育てる
- 日常的にIPと接触させる
- ロングテール作品にもチャンスがある
と、IPビジネスにおける“育成メディア”として非常に重要です。
ここまでの流れと合わせると、“ヒットを育てるには、本編以外の接点が鍵になる”というストーリーが見えてきました。

5. 「IPの価値を一番よく“見ている”のは誰か」という視点
後半では、深田さんよりアニメ産業をさらに俯瞰する“データ”という切り口が提示されました。
世界55カ国の検索・SNS・動画・海賊版などの“熱量データ”から作品の価値を立体的に可視化する Parrot Analytics の仕組みが紹介されます。
ここで浮き彫りになったのは、海外プラットフォームは自社データ+外部データで作品価値を把握している一方で、日本の制作会社・IPホルダーは十分なデータにアクセスできないという “情報の非対称性” の問題です。言い換えると、IPの価値を最もクリアに“見ている”のは海外プラットフォーム側であり、日本側はその前提条件となるデータを持ちきれていない、という構図です。
前半で語られた「ヒットが育たない」「原作が不足する」という話に対し、後半では、“そもそもIPの価値を正しく測る仕組みが持てていないことが、 産業全体の成長を妨げているのではないか”という、さらに上位の構造課題が示されます。
6. 今、日本のアニメ産業に必要なこと
深田さんからは、これらの課題を踏まえ、アニメ産業が持続的に成長するための3つの方向性が提示されました。
- IPの価値をデータで把握する仕組みづくり
- 海外配信プラットフォームとの情報格差を埋めること
- 原作や制作における上流の強化
「誰がデータを持っているのか」、「誰がIPの価値を測れるのか」という視点は、これからのコンテンツビジネスにおける大きな論点と言えます。

当日の参加者からの質問(抜粋)
Q. 原作支援はなぜ重要で、どのような方法がありますか?
A.「大ヒット作品の多くは、ジャンプやマガジンなど特定の出版社にノウハウが集中しています。編集者のスキルや経験は出版社内に蓄積されていて外に出にくい構造があるため、そもそも“強い原作”の供給が限られてしまうんです。
最近は、サイバーエージェントがジャンプ+の名編集者・林士平さんを中心に“現代版ときわ荘”的な取り組みを始めていますが、こうした形で 出版社の外で原作づくりを支える仕組みをつくっていくことがこれから重要になってくると思います。」
Q.各配信プラットフォームの“作品別売上推計”はどう算出されているのですか?
A.「Parrot Analytics の算出ロジックはブラックボックス部分もありますが、大まかには 世界中の視聴シグナル(検索・SNS・動画コメント・海賊版など)を収集し、それらをプラットフォームの公開情報と組み合わせて、“このIPがどれだけ売上に貢献したか”を統計的に推計しています。
ハリウッドのストライキでは、俳優や脚本家が “自分の出演作がどれだけ価値を生んでいるか” を把握するために実際にこのデータが使われ、報酬交渉の根拠にもなりました。つまり、業界で一定の信頼性を持って利用されている指標ということですね。」
ご参加いただいた皆様から寄せられた感想(抜粋)
・「国内コンテンツの制作・製作サイドの利益が上がらない理由背景を再確認できたことは非常に良かったです。」
・「海外市場の大きさやエコシステムを改めて認識できました。」
・「アニメIPにおいて、稼げているのはレジェンドIPばかりである、という直感的な認識を再確認できたのが良かったです。」
・「データ分析ツールについて知らなかったので、そのことを知ることができたという点で、面白いセミナーでした。」
登壇者のお二人、そしてご参加いただいた会員のみなさま、ありがとうございました!
『HiTalent(ハイタレント)』は、戦略コンサルティングファームや投資銀行の出身者を中心に、審査を通過したプロフェッショナルが登録するハイクラスフリーランスのコミュニティです。「優秀な個の選択肢と可能性を広げ、人類の進化に貢献する」をMissionに掲げ、上流の案件をご紹介するだけでなく、今回のような勉強会を通じて、プロフェッショナル同士が学び合える場づくりにも取り組んでいます。

