国内製薬企業である小野薬品工業(以下、小野薬品)は、事業の持続的成長に向けて新規事業創出と人財育成の両面から組織変革に取り組んでいます。
その中核を担うBX推進部では、「医薬品だけでは救えない課題」に向き合いながら、新たな価値を創る挑戦が続けられています。
同部門では、事業開発やイノベーション人財育成を加速するため、ビジネスプロフェッショナル活用サービス「HiTalent」を導入いただいています。
今回は、HiTalentを通じてご支援した2つの新規事業プロジェクトについて、HiTalent導入の目的から外部人財との協働によって得られた成果、さらには新規事業における今後の展望までを伺いました。
インタビューにご協力いただいたのは、BX推進部全体を統括する藤山様に加え、リサーチフェーズでN.T.さん(弊社登録タレント)がご支援したプロジェクトご担当の山下様、事業立ち上げフェーズでS.U.さん(弊社登録タレント)がご支援したプロジェクトご担当の番場様です。
この事例の要点
| 企業 | 国内製薬。BX推進部が新規事業の開発とイノベーション人財の育成を担う |
| 課題 | 患者さんの課題を高い解像度で把握できる強みはある一方、それをどう解決し、どう事業化するか。外部の専門的な知見も得て成功の確度を上げたいと考えていた |
| 活用方法 | 2つの新規事業プロジェクトで、海外事例のリサーチと、市場調査・事業計画策定に伴走 |
| 成果 | 短期間で精度の高い調査結果を得た。あわせて調査設計の手法や進捗管理のテンプレートが、契約終了後も使える組織の資産として残った |
HiTalentの支援テーマ例
経営層
経営課題整理/経営会議資料の構想・作成/経営に関する壁打ち
経営企画部門
中期経営計画策定/事業戦略策定/M&A戦略検討/海外進出支援
新規事業開発部門
事業機会探索/事業仮説検証・PoC支援/外部アライアンス検討
IT/DX・業務改革推進部門
IT/DX戦略策定/グランドデザイン策定/システム導入支援/BPR/コスト削減
研究開発(R&D)部門
R&D戦略策定/ロードマップ策定/技術テーマの事業化/オープンイノベーション
人事/組織開発部門
組織戦略策定/評価制度設計/採用戦略策定/研修コンテンツ作成
IR部門
IR戦略検討/統合報告書作成/財務情報開示/ESG・マテリアリティ分析
全部門に共通
AI・データ活用
担当するのは、戦略コンサル/IT・DXコンサル/ファイナンス人材/データ・AI人材のいずれかです。
この図は「HiTalent はどんなテーマで使えるのか」の見取り図として、全記事に同じものを掲載しています。ここに挙げたものがすべてではなく、ご相談内容に合わせて人材をアサインします。
事業変革と人財育成を両輪で進めるBX推進部の役割
Q.HiTalentをご活用いただいているBX推進部について、小野薬品における立ち位置や、担っているミッションについて教えて下さい。
藤山様:BX推進部のミッションは新規事業の開発と、会社の変革を担う「イノベーション人財」の育成の2つです。
そもそもBX推進部は、現代表取締役会長CEOの相良が主導して始まったものです。小野薬品はこれまで、医療用医薬品事業に特化したビジネスモデルで成長してきましたが、医薬品には特許切れによる業績への影響というリスクがあり、「波に左右されにくい、もう一つの柱を作れないか」という期待がきっかけで部署が設立されました。
もっとも、医薬品以外で新たな事業を作るのは容易ではありません。時間の経過とともに事業環境や社内の視点も少しずつ変化してきました。
現在のBX推進部の立ち位置としては、「まったく新しい領域を切り開く」というよりは、「医薬品以外のアプローチでも、患者さんに貢献できないか」といった視点から、会社全体の変革を支える役割が求められていると感じています。

Q.イノベーション人財の育成という観点では、どのような施策を実施されていますか?
藤山様:当社には経営人財やグローバル人財など、複数の人財育成枠がありますが、その一つとして「イノベーション人財」という枠組みを設けています。
小野薬品では、がん治療薬であるオプジーボなどを中心に、これまで順調に事業を拡大してきましたが、今後もより多くの患者さんに新たな医薬品をお届けし続けるために、一層の企業成長を遂げなければなりません。成長を見据えて、グローバル化を本格的に進めていく必要があるフェーズにも入っています。
そうした中で、従来の枠にとらわれず、会社に大きな変革をもたらすことができる人財の存在が不可欠であるとの考えから、「イノベーション人財」の育成を本格化しました。
具体的な取り組みの一つとしては、医薬品とは異なる業界のベンチャー企業へ1年間出向してもらい、これまで医薬品事業では得られなかった実務経験を積んで戻ってくるというプログラムを実施しています。
また、「HOPE」という社内ビジネスコンテストでは、「医薬品以外の手段で患者さんの課題を解決できないか?」という視点から、幅広いアイデアが社内から生まれています。
さらに、外部のイノベーション事例や最新のビジネストレンドを学べるセミナーも社内向けに開催し、学びの機会を提供しています。
Q.新規事業領域における具体的な成果はどのようなものがありますか?
藤山様:当社のBX推進部では、顧客課題を起点としたいわゆる「ニーズドリブン型」で事業開発を推進しており、がん患者さんをはじめとする当社の主たるステークホルダーが、医薬品だけでは解決できない生活上の困りごとに向き合っています。
BX推進部から生まれた成果としてmichitekuが挙げられます。これはもともとBX推進部で立ち上げ、現在は子会社として独立している取り組みです。
「がんになっても怖くない、誰もがそう思えるような世界をつくる」をビジョンに掲げ、これからのがん治療に向かう不安なあなたと治療や生活を考えるツール「michiteku」(https://www.michiteku.jp/) を提供しています。
michitekuではがん患者さんにとって必要な情報を届け、その不安の軽減を図る取り組みを行っています。今後は、患者さんにとって本当に必要な製品やサービスを、michitekuを通じて届けられるような形にしていきたいと考えています。

新規事業の立ち上げにおける外部知見の必要性
Q.新規事業の立ち上げにあたり、HiTalentをご利用いただいた背景やきっかけを教えてください。
藤山様:一番の理由は、経験者ならではの知見を取り入れたかったという点です。
小野薬品は、患者さんと接点を持ち、課題を高い解像度で把握できるという大きな強みがあります。「その課題をどう解決していくか」「どう事業化していくか」という点で、外部の専門的な知見も得て、より成功への確度を上げていきたいと考えていました。
例えば、医療機関との連携を進めるにあたって、私たちにも一定の関係性はあるものの、病院内の組織構造や意志決定のプロセスまでを深く理解しているわけではありません。そうした構造面に精通し、マネタイズや事業化の具体像を描ける方に伴走していただきたいと考え、ハイタレントさんに相談しました。
初めての外部人財活用に抱いた「スピード」「相性」「ニッチなテーマ」への不安
藤山様:開発中の事業になるため詳細をお伝えできないのですが、山下はがん患者さんの治療を支えるデジタルプロダクトの製作プロジェクトを担当しています。N.T.*さんには営業体制構築に向けて、海外事例などのリサーチ業務を支援いただきました。
※N.T.さん:BCG出身で、新規事業戦略や調査・リサーチを専門に経験。スタートアップ支援やヘルスケア領域での事業開発にも携わってきました。
番場はがん患者さんの生活を支える環境づくりに関するプロジェクトを担当しています。S.U.さん*には市場調査・事業計画策定に伴走いただきました。
※S.U.さん:米系戦略ファームでシニアマネージャーを務め、医療機器・製薬領域の事業戦略や経営計画策定を多数支援してきた経験を持ちます。現在は海外でもデジタルや事業戦略に携わっています。
Q.外部人財(HiTalentのタレント)をご活用いただくにあたり、不安や懸念はありましたか?
番場様:プロジェクトの対象領域が非常にニッチだったため、本当にマッチする人財が見つかるか不安に思っていました。
大手コンサルティングファームでは扱わないような領域だったので、専門性を持った方が見つかるのか半信半疑でしたが、実際にご紹介いただいたS.U.さんは、業界未経験でありながらもヘルスケア分野に対する豊富な知見とご経験をお持ちで、非常に早くキャッチアップしていただき、問題なくプロジェクトを推進いただきました。むしろ私たちが学ばせていただく場面も多く、安心してお任せしていました。

多様な視点の融合が導いた最適な意思決定
Q.多様なステークホルダーが関わる中で、外部人財との連携はどのように進められましたか?
番場様:担当するプロジェクトには、医療現場の方もアドバイザーとして参画しており、現場の声を重視する視点と、事業性を冷静に見極める視点の両立が常に求められる構造でした。
議論が白熱する場面もありましたが、S.U.さんには外部の方だからこそ持てる中立的な立場で、事業性の観点からしっかりと意見を述べていただき、適切なバランスを取っていただきました。
その結果、それぞれの立場の意見が建設的に融合し、小野薬品として最適な方向性を見出すことができたと感じています。
Q.実際にタレントを選定される際には、どういうポイントを重視して決められましたか?
山下様:最も重視したのはスキルのフィット感です。
N.T.さんには最終的には様々なご支援をいただきましたが、当初は海外マーケットに関する調査が主な業務でした。その分野で実績があり、かつスピード感もある方を求めていたため、まさにN.T.さんは理想的な人財でした。
番場様:私は、新規事業立案プロジェクトのマネジメント経験を重視していました。プロジェクトチームの人数も限られていたため、「何から着手すべきか」といった構想段階から伴走していただける方を求めていました。
実際にご支援いただいたS.U.さんは、戦略コンサルティングファーム出身でシニアマネージャーのご経験もあり、専門性に加えて、依頼したこと以外にも積極的にプロジェクトを推進いただき、非常に助かりました。タスクの整理からWBS作成、資料のレビューに至るまで深く関与してくださり、単なる実務支援ではなく、共に推進するパートナーとして動いていただきました。

「自走力」「効率的な体制」「戦略性」──支援から実感したタレントの価値と信頼感
Q.実際のご支援の中で、特に印象に残っている点を教えてください。
山下様:N.T.さんのリサーチの質とスピードには驚かされました。
私たちだけでは到底辿り着けないような海外の深い情報を、短期間で精度高く収集してくださいました。また、その場でのリサーチだけでなく、「こういうアプローチで情報収集できます」「こういったソースを追いかけると新しい情報が取れます」といった、今後の業務にも活かせるようなナレッジや手法を残してくださいました。N.T.さんとの契約が終了した後にも役立つようなノウハウやアドバイスをいろいろといただけたので、そういった点でも非常にありがたかったです。
番場様:大きく3点あります。
1つ目はやはり成果です。有識者インタビューや定量調査の設計の際に、ご経験を活かした意見をいただいたことにより、精度の高い結果を得られました。
2つ目はプロジェクトの推進体制です。S.U.さんはアメリカ在住ということもあり、時差を活かして迅速にご対応いただき、効率的な体制を組むことができました。3つ目はコミュニケーション密度です。時差がある中でも工夫してタッチポイントをこまめに取っていただいたことで、プロジェクトを手戻りなくスムーズに進行できたのでありがたかったです。
得たナレッジがその後も活かせる組織の資産に
Q.プロジェクトの成果以外に、何か変化や学びはありましたか?
番場様:S.U.さんのタスク設計やプロジェクトの進め方を間近で学べたことは、私自身のスキル向上にも繋がりました。加えて、今回作成した進捗管理用のテンプレートや提案資料は、今後のプロジェクトにも応用可能な資産として活きています。
山下様:医薬品事業でのリサーチ経験はあったものの、新規事業検討におけるリサーチ経験がほぼない状態でしたので、N.T.さんから新規事業の調査設計や情報収集アプローチなどを一から学ぶことができました。
思考法やマイルストーンの置き方など、コンサルタントならではの視点を吸収でき、N.T.さんのご経験がまるで自分の経験値として積み上がっていくような感覚がありました。

“ゼロイチ”と“実行”それぞれで求められる支援のかたち
Q.HiTalentのサービスを利用するうえで、有効だと感じたポイントがあれば教えてください。
藤山様:HiTalentには多様なタイプのタレントが登録されており、支援内容や事業フェーズの課題に応じて柔軟に活用できると感じています。
N.T.さんのように情報収集に長けている方は、新規領域での事業環境の把握や海外事例の調査といった、「ゼロイチのゼロ」フェーズで特に力を発揮されます。実際、私たちだけでリサーチを行うと「うまくいきそう」と思ってしまう領域でも、N.T.さんの調査により「実は既に失敗例が多数ある」「業界構造が想定と異なる」といった重要な示唆が得られました。
一方でS.U.さんのようないわゆる戦略コンサル的な方は、実行フェーズや推進フェーズにおいて、非常に相性が良いと感じています。事業開発が未経験のメンバーで組む場面や、経営層とのコミュニケーション設計が求められる場面でも、戦略性と実行力のバランスを持って、事業推進に伴走してくださる点が非常に頼もしく感じられました。
プロジェクトのフェーズに応じて、こうしたタレントを組み合わせて活用することが理想的だと考えています。
医薬品だけでは解決できない課題に挑む新規事業の展望
Q.御社の新規事業について、今後の展望を教えてください。
藤山様:私たち小野薬品BX推進部では、患者さんの「医薬品だけでは解決できない生活上の困りごと」を支援することを目指しています。
とはいえ、どのようなサービスも継続的に提供していくためには、ビジネスとして成り立たせる必要があります。
新規事業の開発において、アイデア段階では「患者さんのためにこういうことができたら良い」という想いは多くあるものの、実際にサービスとして成立させ、継続的に運営していくためには、患者さんの状況やニーズを踏まえた難しい判断が求められます。
CSR活動としての取り組みではなく、「持続可能なビジネスとしてどう成立させるか」という根幹的な部分の難しさに直面していると感じます。小野薬品ではこのハードルに向き合い、乗り越えていくことが、次なる挑戦だと捉えています。
取材のお時間をいただきありがとうございました!

『HiTalent(ハイタレント)』は、戦略コンサルファーム出身者を中心とした審査済みのプロフェッショナル3,600名以上と、その活用を検討する企業をつなぐ案件マッチングプラットフォームです。これまでに300社以上をご支援してきました。戦略を描くだけでなく実行まで伴走できる人材を、必要な分だけ(お一人から、チームでも)ご活用いただけます。
HiTalentサービスサマリ
プロフェッショナル
(フリーランス)
- 戦略コンサル出身
- 外資系投資銀行出身
- 外資系IT・マーケ出身 ほか
個人 or チーム
HiTalent
- プロフェッショナルには、アサインから稼働終了までサポート
- 事業会社には、ニーズにマッチするタレントの稼働をマネジメント
審査済みの会員 3,600名〜
事業会社
- 上場企業
- 未上場・中小企業
- 未上場・スタートアップ
クライアント 300社〜
- ご要望を伺ってから、最短1週間でのアサインが可能です
- 期間は柔軟に対応でき、個人でもチームでも組めます
- 契約は「ハイタレント株式会社と企業様」「ハイタレント株式会社とコンサルタント」の2本を結びます

